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2012年7月

2012年7月31日 (火)

胃の病気 ——原因と発症——(4)

予防・治療のポイント
交感神経の過剰緊張による血流障害の解消と
炎症を鎮めることが重要

 胃潰瘍では従来、手術が多用されていましたが、胃酸の分泌を強力に抑えるHブロッカーが開発されて以来、手術は激減しています。しかし、薬をやめると再発するケースが多く(再発率80%)、また、実際に胃酸が出過ぎている人は胃潰瘍患者の10%位に過ぎないとの報告もあり、薬に頼るばかりでは根本的な治療には到りません。
 新潟大学医学部の安保徹教授と福田医院の福田稔先生は、精神的ストレスや暴飲暴食、非ステロイド系消炎鎮痛剤などの薬剤、ピロリ菌感染などはすべて、自律神経の交感神経の緊張を招く因子であるとして、自律神経のアンバランスが胃炎・胃潰瘍を引き起こすと指摘しています。
〈血流障害〉
 交感神経が優位になると、血管が収縮して血流障害がおこります。その結果、胃粘膜の細胞に酸素や栄養が十分に供給されず、胃の防御因子である粘液の分泌が減って、胃粘膜が胃液にさらされやすくなります。
 また、血流の一時的な低下(虚血)のあと、とだえていた血流が再開(再灌流)するのに伴って大量の活性酸素が発生し、この活性酸素の暴発も胃粘膜にダメージを与えます。
〈分泌・排泄機能の低下〉
 交感神経が優位になる一方、副交感神経が司っている分泌・排泄機能は低下し、胃の蠕動運動や胃液の分泌が抑制されて、胃もたれや食欲不振がおこります。
 安保教授によると、「この状態を解消しようと一過性の副交感神経反応が引き起こされ、突然の蠕動運動と胃液の分泌がおこる。この反応を、痛みが伴う故に胃潰瘍の原因とみなしたため、誤って多くの制酸剤が投与されることになった。痛み自体を治療対象にするのではなく、その先にある原因を治療しなければならない」と強調しています。

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2012年7月27日 (金)

胃の病気 ——原因と発症——(3)

攻撃因子と防御因子の
アンバランスが問題

 しかし、ピロリ菌に感染していなくても胃炎や胃潰瘍は起き、また、ピロリ菌に感染している人すべてが胃炎や胃潰瘍になるわけではなく、ピロリ菌に感染しているところにさらに危険因子が加わることで発症しやすくなるといわれています。
 胃炎・胃潰瘍は、胃の“攻撃因子”と“防御因子”のバランスが崩れることで発生すると考えられています。
〈攻撃因子〉
 攻撃因子には ピロリ菌の他、 食物の消化に欠かせない胃液が筆頭にあげられます。胃液の主成分は、pH1〜2・5という強酸性の胃酸と、蛋白質消化酵素のペプシンで、これらは胃粘膜に直接ふれると胃そのものを消化してしまう力をもっています。さらに、 精神的ストレス、 暴飲暴食、 喫煙、 非ステロイド系消炎鎮痛剤などの薬剤も攻撃因子を強める要因になります。
〈防御因子〉
 一方、胃液の消化作用から胃を守っている防御因子が、 胃粘膜を覆う粘液と、 胃粘膜細胞に酸素と栄養を供給する血液循環、 新陳代謝による胃粘膜の抵抗力です。

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2012年7月24日 (火)

胃の病気 ——原因と発症——(2)

〈胃潰瘍〉
 胃潰瘍は、食物を消化するための胃液によって自らの胃粘膜が消化されてしまった状態で、胃壁が内側からえぐられたり、胃穿孔といって胃に孔があいてしまうこともあります。
 急性胃炎が進行して胃粘膜にただれや潰瘍が多発した状態が「急性胃潰瘍」、それよりやや症状は軽いものの、再発をくり返しやすいのが「慢性胃潰瘍」です。
 空腹時や食後のみぞおちの痛み、腹部膨満感、胸やけ、胃もたれ、食欲不振、吐き気、吐血・下血などの症状があらわれます。
 胃潰瘍が進行して胃がんになることはないとされていますが、胃炎・胃潰瘍の一因となるピロリ菌感染は、胃がんの危険因子ともいわれているので注意が必要です。

胃のトラブルの背景にピロリ菌の感染

 胃炎や胃潰瘍の原因として、近年もっとも注目されているのが「ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)」です。
 ピロリ菌は、1983年にオーストラリアのバリー・マーシャルという内科医が胃粘膜の中から発見した細菌で、らせん形(へリコ)の鞭毛をもつ細菌(バクテリア)が胃の幽門(ピロルス)付近に住み着くところから名付けられました。
 長い間、強酸性の胃の中では細菌は生きられないと考えられていましたが、ピロリ菌は、胃酸に直接ふれないよう粘液層の中に潜り込んで生息し、自らアルカリ性のアンモニアを合成して、胃酸を中和することで身を守っています。
 このアンモニアが粘液層を溶かして胃粘膜を障害したり、ピロリ菌が放出するサイトトキシンなどの毒素や、白血球(顆粒球)が放出する活性酸素とアンモニアが反応してできるモノクロラミンという物質が、胃粘膜を傷つける原因になります。
 ピロリ菌の感染は主に子供の時の不衛生な飲食から経口感染し、萎縮性胃炎ではほぼ100%、胃潰瘍では70〜90%と、日本では国民の2人に1人、特に40歳以上では7割以上もの人がピロリ菌に感染していると報告されています。
 ピロリ菌は胃がんへの関与も指摘されています。日本人に胃がんが多かったのは従来は、白米に干物や漬け物といった低蛋白・高塩分食で、胃粘膜をつくる蛋白質が不足しているところに高塩分で胃粘膜が障害されるためと考えられていました。ピロリ菌の発見以後、最近はピロリ感染率の高さと高塩分食の相互作用が、日本人に胃がんを多くもたらしたのではないかといわれています。
 胃がん検診受診者を対象とした産業医学大学の徳井教孝講師らの調査では、ピロリ菌陽性で高塩分摂取者では、胃がんの引き金となる萎縮性胃炎のリスクが16倍にも高まり、高塩分食とピロリ菌感染が相乗的に胃がんリスクを高めることが示されています。

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2012年7月17日 (火)

胃の病気 ——原因と発症——(1)

 日本人に胃潰瘍や胃がんが多かったのは、白米に干物や漬け物という低蛋白・高塩分食の影響がいわれています。また、“胃腸は心の鏡”といわれるほどストレスの影響を受けやすく、そうしたメンタルな影響も関係しているのかも知れません。
 さらに最近注目されているのが、ピロリ菌感染と胃のトラブルの密接な関係で、40代以上の日本人の7割が感染しているといわれています。

 胃炎・胃潰瘍とは

〈胃炎〉
 胃炎は、胃の粘膜が炎症をおこしてただれた状態で、胃に強い刺激が与えられた場合におきる一過性の「急性胃炎」と、炎症が長引いたり、くり返しおこる「慢性胃炎」があります。
 急性胃炎では強い腹痛や胃の不快感を訴えますが、慢性胃炎の場合は、むかつき、胸やけ、胃もたれ、食欲不振などの不定愁訴的な症状があらわれます。
 慢性胃炎自体はありふれた病気ですが、炎症部位で絶えず発生する活性酸素によって、細胞ががん化しやすくなる危険があります。
 日本人の慢性胃炎の約6〜8割を占める「萎縮性胃炎(炎症をくり返すうちに胃粘膜が徐々に縮んで薄くなったもので、老人に多い)」は、胃がんの前がん状態ともいわれ、正常な胃粘膜に比べて、胃がんの発生リスクが5・7倍と高くなるので要注意です。国立がんセンターの研究でも、慢性胃炎の頻度と胃がん死亡率は相関することが明らかになっています。

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2012年7月13日 (金)

間欠性跛行(4)

●半身浴・足湯 39℃前後のぬるめのお湯に、みぞおちから下だけ20〜30分ゆっくりつかる半身浴、または、ふくらはぎから下を10〜15分浸す足湯も、血行促進に効果的です。
 炭酸ガスを溶かし込んだ温湯は血流効果が高く、半身浴や足湯に炭酸ガスが出る入浴剤(花王のバブなど)を用いるのも良いでしょう。人工炭酸泉治療を行っている大阪の松尾循環器科クリニックの松尾汎院長は、「人工炭酸泉に足を浸すと、数分後には血流量が3〜5倍に増える。炭酸ガスには、皮膚から直接入り込んで血管を拡張させる作用の他、交感神経の刺激をゆるめて緊張をほぐし、血行を良くする効果がある」と説明しています。
●よく歩く 足が痛いからといって動かないのはよくありません。
 閉塞性動脈硬化症の場合、“よく歩く”ことで足の筋肉を動かしていれば、動脈硬化ができた血管の周囲の細い血管が自然に発達し、バイパスの役割をして血流を確保してくれます。無理はせず、痛くなったら休むようにしながら歩いているうちに、間欠性跛行があらわれるまでの距離は次第に延びていきます。
 腰部脊柱管狭窄症の場合、“階段の二段上り”が、腰から臀部にかけての腸腰筋と大腰筋をほぐし、腰の血行を良くするのに役立ちます。コルセット(腰バンド)をつけ、ゆっくり時間をかけながら、1回3往復を1日3回位、足腰の弱っている人は必ず手すりにつかまりながら行って下さい。
 また、脊柱管狭窄症の人は座っている姿勢が楽なので、“自転車こぎ”などもすすめられます。
●脊柱管狭窄症の対処法としてはこの他、 根本原因となっている腰椎(腰の骨)の歪みを矯正するだけでなく、 頸椎(首の骨)の歪みを矯正することで脊椎全体を調整したり、 自分の足に合った正しい靴を選ぶことで、足もとから全身を調整していく——という三方向からの治療法が考えられます。いくつかの治療法を組み合わせてみるのも良いでしょう。


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2012年7月12日 (木)

間欠性跛行(3)

血流を良くする食事・栄養療法

●血流を良くする食品 食生活ではまず、血流を阻害する肉・卵などの動物性食品や、リノール酸系植物油を控えることが大事です。3頁の食事指針を参考に、油はα—リノレン酸系のシソ油や亜麻仁油、魚油のDHAやEPAを適量。また、納豆や、玉ネギ、ニンニクなどの血液サラサラ成分を含む食品(表2)、コレステロールを吸着する食物繊維を積極的にとりましょう。
●微量栄養素では、抗酸化ビタミンのA、C、Eや、抗酸化酵素を活性化させるミネラル類(セレン・銅・鉄・マンガンなど)、ポリフェノール・フラボノイドなどの植物性生理活性物質(ファイトケミカル)が、体内でLDL(低比重リポ蛋白)コレステロールの酸化を防いで動脈硬化の予防に役立ちます。ビタミンEには血行を良くする作用もあります。
●水分の補給も、血液の粘りを防いで血流を良くするのに重要です。利尿作用の強いカフェイン飲料や、腸の働きを阻害する冷たい飲み物は避け、体温以上の温湯を少量ずつチビチビととるのがコツです。

日常生活の注意

●禁煙 喫煙は血流を確実に悪化させます。閉塞性動脈硬化症やバージャー病の患者には喫煙者が多く、禁煙が欠かせません。
●ストレス対策 過度のストレスは自律神経の交感神経を緊張させ、血流障害を招きます。睡眠不足や過労、暴飲暴食などの不規則な生活習慣を改めると共に、自分なりの上手なストレス解消法を身につけることが大事です。
 副交感神経を刺激して自律神経のバランスを整えるには、本誌で度々ご紹介している“爪もみ療法”が役立ちます。“よく笑う”のも副交感神経を大いに刺激します。
●冷え対策 足の冷えは全身の血流を悪くします。ヨシコクリニックの高木嘉子院長は、冷え対策として、5本指靴下に木綿の靴下を重ね履きしたり、絹のレッグウォーマーをつけたり、靴下の裏側や腰に使い捨てカイロを張るなどの工夫をすすめています。

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2012年7月 9日 (月)

間欠性跛行(2)

冷えやしびれから始まる——閉塞性動脈硬化症 

足や腹部の動脈硬化が原因で下肢の血流が悪くなる「閉塞性動脈硬化症(図3)」も、間欠性跛行を引き起こす一因です。足の筋肉に酸素を送る血液量が不足するため、運動をすると筋肉が虚血状態になって痛みが生じます。
〈原因〉
 患者は50歳以降の男性に多く、日本では毎年3千人以上のペースで増えていると指摘されています。動脈硬化の危険因子となる 加齢、 喫煙、 肥満、 高脂血症、 高血圧がある人は要注意です。 糖尿病の合併症としてもおこりやすく、“糖尿病予備軍”といわれる境界型の段階から動脈硬化は着実に進んでいます。
〈症状〉
 閉塞性動脈硬化症と腰部脊柱管狭窄症とでは、同じ間欠性跛行でも症状に若干の違いがあります。閉塞性動脈硬化症の場合は、立ち止まって休めば徐々に痛みは和らぎますが、脊柱管狭窄症のように、座ったり前かがみの姿勢で楽になるということはありません。
 症状は足の冷えやしびれで始まり、やがて間欠性跛行があらわれ、さらに血流障害が進むと安静時にも痛みがひかず、最後には潰瘍(壊疽)ができて足を切断しなければならなくなる場合もあります。
 また、閉塞性動脈硬化症の患者は全身の血管に動脈硬化が進んでいる可能性があり、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などをおこす危険も高くなります。心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病を合併する場合の5年死亡率は30〜50%に達し、下肢切断に至るのは10〜20%と報告されています。
 この他、手足の細動脈に血栓がつまる「バージャー病(閉塞性血栓血管炎)」も、間欠性跛行を伴います。原因不明の難病に指定されていますが、患者のほとんどが喫煙者であることが分かっています。
血流の改善が鍵 閉塞性動脈硬化症やバージャー病などの末梢血管障害を改善するには、動脈硬化や血栓を防ぎ、血流障害を解消する必要があります。
 また、脊柱管狭窄症のような整形外科疾患でも、神経に栄養を送る血流が回復すれば、足の痛みやしびれ、歩行能力が改善することが報告されています。福島県立医科大学医学部の菊地臣一教授は、「神経の圧迫があっても、血流を良くすると神経の機能は落ちないことが動物実験で証明されている。現に血流が良くなった患者では痛みやしびれを感じなくなる場合がある」と指摘しています。
 つまり、閉塞性動脈硬化症でも脊柱管狭窄症でも、間欠性跛行を解消するには血流障害の改善が最大のポイントになります。

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