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2009年4月

2009年4月30日 (木)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(48)

養鶏と養豚が
鳥インフルエンザ流行のもと

 前回の『もう肉も卵も牛乳もいらない!』の養鶏産業の章紹介のあと、ついにヨーロッパでも鳥インフルエンザの流行の兆しが見られはじめ、本格化すると一億人以上の死亡者が出るという見込みで、その感染を避けるため鶏肉や卵の消費者による大規模な買い控えがおきているというニュースが飛び込んできました。

 北から南にウイルスを持って国境を飛び越えてくる渡り鳥が鶏に糞や羽を落として感染させるほか、豚を介してウイルスを変身させ、それが人にうつり、人やカラスなどを介しても鶏にうつすルートも否定できないということです。

 養鶏場は一ヶ所で十万羽を越える飼い方をしていることもあり、感染が広がり出したら更なる感染拡大を阻止するため十万羽規模でも、皆殺しということもあるのです。日本では今年は茨城県で、去年は京都で大規模な養鶏場での数万羽規模での養鶏皆殺しが行われたことは記憶に新しいところです。

 豚の特異な鼻には、鳥のインフルエンザウイルスの受容体があり、人のインフルエンザウイルスの受容体もあるので、豚がたまたま両方のウイルスに感染したときに豚の体内で両方のウイルスが野合して人から人に感染し、しかも殺傷力のある新型のウイルスに変身することがあるとのことです。

 数年前のことですが、マレーシアで飼われていた豚が数千頭皆殺しにされたことがありました。これは、養豚場が山に近いところに新設され、山の洞窟に住むコウモリから豚やヒトにとっては危険なコロナウイルスをうつされたからです。

 鶏の飼い方が如何に残酷な事態になっているかは先月号でご紹介した『もう肉も卵も牛乳もいらない!』の養鶏産業の章を見て戴ければ察しのつくことですが、同じことは養豚でも言えます。早川書房刊エリック・マーカス著『もう肉も卵も牛乳もいらない!』の熟読がそのきっかけになればよいとの念願をこめ、その内容紹介を連載していますが、今回は「養豚」の章の一部ご紹介です。

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2009年4月28日 (火)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(47)

食肉処理場への行進

 生後六週間から七週間経ったところで、養鶏農家は成長途上の鶏たちを食肉処理場に連れていく。なぜもっと大きくなるのを待たずに解体するのか? 生後六週間ころから、死亡率が急激に高まるからである。鶏たちは熱波、感染、促成飼育がもたらすその他の病気によって死に始める。今日多くの鶏たちは、わずか生後七週間であるにもかかわらず、心臓疾患の間際で解体されている。ある研究では、解体時期を生後一六週間まで遅らせた。鶏の平均寿命は数年間なので、これでも若い方である。それでも鶏たちの二六%は心臓疾患で死に、その上さらに一〇%はその間際にあった。

 解体の一二時間前から餌は与えられない。もう肉になる時間がないからだ。「捕獲者」のチームが鶏舎に入る。鶏舎が混み合っていて逃げ場がないうちがもっとも捕まえやすい。作業員らは鶏たちを輸送用の箱に入れ、トラックに積み上げて食肉処理場へと運ぶ。

 食肉処理場への輸送は致死的なトラウマになることがあり、暑い日には特にそうである。鶏たちは犬と同様、荒い息をして身体を冷やそうとする。それにつれて、箱の中の温度はどんどん上がり、ついに呼吸ができなくなる。さらに輸送中の振動や動きもストレスになる。すでに七週間のブロイラー鶏舎でのストレスを受けた鶏たちにとって、輸送の重圧は耐えがたい。輸送中に死んだ一三二四羽を調べた結果、四七%は心不全が死因だった。報告書は「おそらくあらゆる心不全の原因において、捕獲、積み込み、そして輸送のストレスに対する心理反応は、心臓系にとって対処しきれないものだったのだろう」と述べている。

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2009年4月27日 (月)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(46)

お化け鶏

 米国で大量消費のために生産されているもう一種類の鶏は、「ブロイラー」である。卵ではなく、食肉生産のために飼われている鶏だ。「成長プロセスの変化によって、間違いなく、脚が弱っている鶏は増えている」。ブロイラー鶏の約九〇%は歩行に問題を抱えている。ブロイラー鶏の六%はあまりにも障害の程度がひどいので、牛に適用されている法律をあてはめれば、人間の食用として販売できなくなるほどだ。

 鶏の身体の成長がどんどん進み、それにつれて脚の問題も深刻になるのを見て、研究者らはいずれ鶏が自然な生殖能力を失ってしまうのではないかと恐れている。促成飼育はまた、疾病と闘うための免疫力をも弱めている。奇妙な話のようだが、養鶏農家は鶏が自然な免疫力を持つことを望んでいない。むしろ、疾病を投薬によって水際で防ごうとする。疾病を薬で抑えれば、鶏たちの代謝エネルギーは通常の免疫反応にではなく、成長に使われるからだ。鶏が品種「改良」で正常な免疫力を奪われていなければ、それによる成長の遅れのため、養鶏産業は年間に数億ドル規模の損害を被るだろう。

 二万羽もの鶏たちが詰め込まれているとあって、ブロイラー鶏舎の空気は、吸入不可寸前になっている。動物学者たちは、空気の質を改善する方法を見いだしていない。鶏舎の作業員らは政府規制の倍の水準の粉塵を吸入し、異常なほど高い率で気管支炎、肺炎、そして肺疾患を患っている。鶏舎の温度も危険な水準に至ることがある。一九九五年の熱波では、四〇〇万羽以上ものブロイラー鶏が死んだ。

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2009年4月24日 (金)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(45)

 今日の鶏は産卵能力は高まっているが、同時に他の鶏に対する攻撃性も高まっており、時には共食いまでする。産卵能力を高める品種改良の過程で食料や水をより多く必要とするようになったため、攻撃性も高まっているのだ。一羽が攻撃を仕掛ければ、やられる方は逃げ場がない。

 同じケージの二羽が不仲になっても、どちらかが死ぬまで二四時間同じ狭いケージに閉じこめられる。鶏卵工場にこもる熱も、こうして監禁された鶏たちの攻撃性をさらに高めたり、一〇〇〇羽単位の大量死の原因になっている。一九九五年の夏、換気扇が役に立たないほどの熱波のため、二五〇万羽以上もの鶏たちがケージに閉じこめられたまま窒息死した。

 卵を産み始めて一年ほど経つと、雌鶏の採卵効率は落ち始める。農場ごとのやり方と代替用の鶏の値段によって、こうした鶏は食肉処理場に送られるか、強制換羽させられるかの運命が決まる。強制換羽は、厳しい冬期を模した環境で行なわれる。こうすれば雌鶏の体内時計がリセットされ、鶏たちはさらに数カ月間、より多くの卵を産むようになるのだ。強制換羽の間、鶏たちは完全な暗闇に閉じこめられ、餌は七日間から一四日間(時にはもっと長く)、まったく与えられない。ある著名ブリーダーは、雌鶏の体重が三〇%落ちるまで餌を取り上げろと薦めている。多くの鶏は、さらに恐怖を味わう。ケージ仲間は死に、狭苦しいケージの中で腐っていく。換羽期間が終わるまで照明はつかない。灯りが再びつけられて餌が与えられるころには、鶏たちの五%〜一〇%は死んでいる。

 強制換羽をしようがしまいが、卵を産み始めて最初の二年のうちに、採卵効率は落ち、たいていの雌鶏は「使用済み」と見なされる。その雌鶏たちはまだ幾らかの卵を産むが、ケージを空けて新しい鶏たちにすっかり入れ替えた方が安上がりなのである。鶏舎の鶏たちはひとまとめに食肉処理場に送られる。

 終生をケージの中で身動きもできずに過ごし、卵の殻にカルシウムを奪い取られ続けたおかげで、鶏たちの骨はすかすかになっている。

 今日の鶏舎は途方もない規模に達しているが、それさえも現在建築中の巨大新型鶏舎に較べればミニチュアのようなものである。米国にはすでにこうした、一箇所で一〇〇万羽以上を擁する「巨大農場」がたくさんあり、さらにその数はいや増している。

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2009年4月23日 (木)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(44)

くちばし切除

 過密な飼育環境で生き長らえるために、雌鶏には終生、餌に混ぜて薬剤が与えられる。さらに鶏の習性も管理しなければならない。つつき順という秩序を失ったことと過密飼育の苛酷なストレスのもとで、鶏たちは死ぬまでつつき合う。養鶏農家では、この問題をシンプルな方法で解決している。ストレスにさらされた鶏が使う主な武器はくちばしだ。くちばしを取ってしまえば、どんなストレスにさらされても、傷つけ合う力は弱まる。

 電気で熱せられた刃は、くちばしの四分の一ほどを切り取る際に、血管を焼灼する。ひよこ業界では、この作業を「くちばしトリミング」と、あたかもマニキュアを塗ることか何かのように呼ぶ。

 くちばしの中には神経組織の末端が通っている。痛みは約二四時間後に訪れて、少なくとも六週間続く。「くちばしトリミング」には痛み止めは使われない。
 動物愛護運動家でさえ、養鶏所にいくと個々の鶏たちに同情を感じるのは難しい。そこは薄暗く、数万羽もの鶏がひしめく場所だ。そんな数の鶏に囲まれていると、一羽ずつの個性を感じるのは難しい。
 
 ある養鶏専門誌では、採卵舎の状態を細かく記録している。今日、レイヤー雌鶏の九八%は生涯の大半においてケージに入れられており、業界の専門家はこれからこの比率はさらに高まると予測している。レイヤー雌鶏はふつう五羽ごとにケージに入れられ、ケージ一つの床面積はタイプ用紙(A4用紙に近い)二枚分もない。当然ながらこうした過密環境では鶏の死亡率も高まるし採卵効率も落ちる。しかしケージ一つに四羽以下を入れた場合よりも、結局は利益は高くなるのである。業界は過密環境が鶏の骨を弱めることを認めており、レイヤー雌鶏の四四%は脚に異常を抱えている。

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2009年4月22日 (水)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(43)

養鶏産業

 動物救護活動家ロリー・バウストンによれば、あらゆる「食料動物」の中でもっとも非人間的な扱いを受けているのは、現代的な施設で飼われている鶏だという。こうした施設についてはほとんど知られていないため、鶏やブロイラーの実態は、ほぼ完全に闇の中だ。忘れがたい紙上「実態体験ツアー」を読み進めてほしい。

 現代的な養鶏施設では、一〇万羽もの鶏を詰め込んだ鶏舎を、一人か二人の係員で管理する場合さえある。係員の仕事は自動給餌装置と採卵装置が滞りなく働くかどうかを監視し、死んだ鶏を檻から取り除くことだ。

 「監禁や過密飼育が続くという点では、いかなる畜産場も今日の養鶏所にはおよびません。これまでに数十箇所の養鶏所を見ましたが、それらはケージ(鶏を入れておくカゴ)、建物の構造や配置、さらに動物の扱いに至るまで、事実上瓜二つでした。鶏たちがこうした環境の中で倒れていくのは日常茶飯事です。弱った雌鶏は年を取っているため、ほとんど価値がありません。獣医を呼んで手当してやるなど問題外です。こうした鶏は通常、ケージから引き抜いて床に放置されます。鶏たちは、そのまま衰弱や渇きによって死んでいくのです。ケージの中で息絶え、係員が通りかかって引き出されるまで数時間から数日も放置される場合もあります」

 鶏は群れになると速やかに「つつき順」を形成する。秩序を守るためだ。二羽の鶏が給餌場で鉢合わせすると、順位が高い鶏が先に餌を食べる。鶏は群れの他の個体の順位が自分より上か下かを覚えている。しかし最大で約五〇羽までしか覚えられない。この限界を超えて集中飼育しようとすると、殺し合いが始まる。また、群れが大きくなるにつれて病気の発生率も高まる。

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2009年4月21日 (火)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(42)

先進国・後進国の食糧事情

 古くはヨーロッパ列強、近くはアメリカが後進国を勢力範囲に取り込む版図を広げた時には、まず軍事的に相手を制圧してエネルギーの供給と情報を抑え、しかる後に政治的、文化的、経済的、宗教的にがんじがらめに反抗の芽をつんで、甘い汁を吸う寄生構造を永続させようとします。その時持ち込む食文化が肉食文化であり、被支配民族はそれまでの伝統的食文化にとってかわって、幼児からまず鶏肉、鶏卵の味に慣らされ、次に豚肉、最後に牛肉・牛乳に味覚が慣らされるプログラムが実施されていきます。そして伝統食を忘れさせられ、彼らの提供するパンの原料の小麦、鶏・豚・牛の餌のトウモロコシ、大豆カスの供給を通じて食糧の供給を握られると、金融を通じて富の蓄積をむしり取られても反抗できなくなります。

 長い目でみるとこのプロセスは大体、世界共通です。アメリカに未だに首根っこを押さえられている日本も例外ではありません。大東亜戦争に敗れてアメリカに7年占領統治され、その後も勢力圏内に取り込まれてきたので、日本はアメリカの豊かな農産物生産能力に依存することになりました。

 ところがそれから50年、広大な穀倉地帯を支えるロッキー山麓、超巨大な地底湖オガララの地下水資源も吸い上げられるだけ吸い上げられ、とうとう水位が下がり枯渇も心配されるようになり、異常気象の悪影響がもたらす表土流出などもあって、急テンポの農産物生産能力低下や輸出能力急減によって、近い将来、一転、日本の食糧輸入は心配ということにならざるを得なくなりつつあります。

 すでに深刻となっているアメリカ農業の不振事態は数年先の近未来には破綻を来たし、食糧は価格が高騰し、アメリカからの輸出は激減せざるを得ないとの予測が現実味を帯びてきています。根本的対策としては鶏・豚・牛などの肉食を自覚的にやめていく以外ないのですが、その意識を高めていく中で、盟主国たるアメリカの養鶏事情はどうなっているのかを知ることは、とても大事なことになってきました。そこで今月号では、この章の要約を掲載させていただきます。是非、本屋さんでこの本、『もう肉も卵も牛乳もいらない!』(早川書房)をお求めになり全文をお読みいただきますように。

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2009年4月20日 (月)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(41)

ノアの箱舟

 一九八六年に結婚して以来、ロリーとジーンのバウストン夫妻は質素に暮らしてきた。二人はグリーンピースのボートで活動中に知り合い、ぜいたくなライフスタイルをもたらす仕事よりも環境保護運動を選んだ。しかしバウストン夫妻は動物救助活動を続けていくにつれて、餌代や獣医師代を稼ぐ必要に追われるようになった。

 コンサート会場でTシャツを売っていた友人がヒントになった。やがて米国北東部で有名ロックバンドがコンサートを行なう度に、二人はバンに豆腐ホットドッグを満載して会場前に駆けつけた。彼らのホットドッグ屋は大成功し、引き取った動物の世話をするのに必要な資金を稼ぐことができた。

 一九九〇年、二人はニューヨーク州北部にファーム・サンクチュアリを設立し、一九九三年には二つ目の農場を開くためにカリフォルニアを訪ねた。二人は、カリフォルニア州オーランドに美しい一二〇ヘクタールの地所を得た。畜舎を五棟建て、四〇ヘクタールをフェンスで囲った。初年度が終わるころには、西海岸ファーム・サンクチュアリは数百頭もの牛、羊、豚、そして鶏を引き取っていた。
 ジーンが残酷行為の実態調査で全国を回っている間、ロリーはたいてい西海岸の新農場を基地に、さまざまな動物救援活動を行なっている。ファーム・サンクチュアリが初めて動物虐待関連の訴訟に勝ったのは、一九九三年、ぺンシルヴァニア州でのことだった。ヒルダを拾った家畜置場が相手だった。

 またロリーとジーンは、ファーム・サンクチュアリにおけるフルタイムのインターンシップ・プログラムを開発した。毎年、ファーム・サンクチュアリは五〇人以上の人々にインターンシップを与えている。インターンは動物の世話をし、ファーム・サンクチュアリの日常活動に参加する。多くのインターンにとって、ファーム・サンクチュアリでの仕事はヴィーガン運動への第一歩であり、動物を助けるためのパートタイムやフルタイムの仕事の手始めである。

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2009年4月17日 (金)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(40)

アニマル・ハズバンドリー(畜産業)はアニマル・サイエンス(動物科学)に

 約五〇年ほど前まで、大半の農家は動物たちを今日のファーム・サンクチュアリのように扱っていた。当時、農家の生業はアニマル・ハズバンドリー(畜産業)と呼ばれていた。動物たちを養育する義務があったことがわかる。コロラド州立大学の生命倫理計画ディレクターのバーナード・ローリンは、こう書いている。「伝統的な農業では、動物の摂理に反したり、動物を傷つけたりする農法は深く染みついたハズバンドリーの倫理に反するばかりか、はっきりと自分の不利益になって返ってきた」

 ローリンは、過去五〇年の間に、「アニマル・ハズバンドリー」は「アニマル・サイエンス」に取って代わられたと言う。このふたつの言葉の意味は深いところで違っている。アニマル・ハズバンドリーは二〇世紀前半の農業倫理を反映しており、当時農民は、飼っている動物たちに理想的な環境を与えてやるために努力していた。それは必ずしも慈悲心によるものではなく、十分な利益を得るための唯一の方法だったからだ。今日の農家には、しかし、そんな倫理は用無しだ。五〇年にわたる動物科学の研究によって、薬剤、ホルモン剤、体系的な去勢・烙印・角切りなどの手術、さらに品種改良などの手段が発達した。これらを組み合わせると収益性は向上した。しかし動物たちは、苛酷な過密環境で飼育され、より早く殺されることになった。結果的に、家畜の暮らし向きは、動物科学革命のあおりを受けて悪化したのである。

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2009年4月16日 (木)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(39)

ヒルダ

 ほぼ一杯の水だけで回復したヒルダは、ゴミのように捨てられていた。持ち主が持て余したのである。彼女はバウストン夫妻が救った最初の動物で、「食用動物」の多くが受けている虐待の象徴的存在になった。

 ヒルダは数十頭もの羊と一緒に、トラックの荷台に詰め込まれていた。動物を市場に運ぶときにごく普通に行なわれていることだ。こうしたストレスの強い環境では、それに耐えられない動物が出てくる。バウストン夫妻が家畜置場の記録を調べてみると、ヒルダはここに着いたときに歩けなくなっていたことがわかった。トラックの運転手はヒルダを荷台から引きずり出すと、デッド・パイルに投げ込んだのだ。ヒルダは、ジーンとロリーが発見するまで、約一六時間もパイルに横たわっていた。

 バウストン夫妻は、こうした虐待の事実があれば、地域当局が運転手や家畜置場に対して法的措置をとるのに十分だろうと確信した。しかしまもなく、ぺンシルヴァニアをはじめとするいくつかの州では、家畜は動物虐待法の対象外であることがわかった。動物をまだ息があるうちにデッド・パイルに捨てることは農業では珍しくない、と聞かされたのだ。

 ファーム・サンクチュアリの住人第一号になったヒルダには、残酷で非人間的な環境から救われた他の多くの動物たちが続いた。

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2009年4月15日 (水)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(38)

 ロリーとジーンはヒルダを家に連れて帰り、ヒルダのような動物を世話する避難所の必要を実感して、しばらくしてファーム・サンクチュアリを法人組織にした。二人は家畜置場や食肉処理場巡りを続けた。ほとんど毎回のように、ネグレクト(粗略な扱い、無視)されたあげくに捨てられて瀕死の動物が最低一頭は見つかった。庭先には、続々とこうして救い出された動物たちが増えていった。ヒルダのような羊だけでなく、鶏、七面鳥、若い豚、そして子牛もいた。

 「動物を救出することは、私たちにとっても救いになりました」とジーンは回想する。「食肉処理場の有様を目撃するのは、心が痛みました。動物を救うたびにそんな心が癒やされました。家畜置場や食肉処理場、そして工場農場で何度も目撃したものを考えると、救助動物たちは、本当に私たちの心の平安の拠り所になりました」

 動物たちが増えるにつれて場所は手狭になり、夫妻は数百頭の救助動物を迎え入れられる広大な動物避難所を夢見始めた。一九九〇年、バウストン夫妻の努力は数十人のボランティアと数千人の支持者を集め、数ヵ所を見比べた後にワトキンズ・グレンのそばの農場を買うことになった。そこには八棟の畜舎と、ビジターの会議センターを建てた。人々が農場で一晩を過ごした翌日に動物たちに親しんでもらうために、さらに資金を集めてベッド&ブレックファスト(朝食のみ供する宿泊所)小屋も三棟建てた。畜舎はじきに、バウストン夫妻が住処を提供しなければ怪我、病気、ネグレクトによって死んでいただろう動物たちでいっぱいになった。

 見学のスクールバスも立ち寄るようになり、大勢の子供たちに動物に親しむ機会を与えた。休暇の家族客たちも訪れた。「動物の里親になって下さい」キャンペーンは、必要な資金づくりに大いに役だった。テレビ番組や全国規模の雑誌がバウストン夫妻の活動を報じ始めると、ファーム・サンクチュアリの会員は数万人に膨れ上がった。

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2009年4月14日 (火)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(37)

相哀れむという心情(続く)

 「この羊、デッド・パイルから引きずり出してきたんです」ロリーは獣医に言った。「どうにか、一晩生き延びたようなのです。おそらく命は助からないでしょうが、せめて人道的な安楽死をと思って」

 獣医は羊をちょっと診察して言った。「熱ばてとひどい脱水症状以外には、これといって悪いところはないようです。息を吹き返せると思いますよ」獣医は羊にいくらか水を飲ませ、ビタミン剤を注射してやった。

 診断は正しかった。二〇分後、羊は立ち上がった。ジーンとロリーは彼女をヒルダと名付け、住まいを与えてやらなければと考え始めていた。

 ちょっと水を与えて日陰で休ませればいいだけの羊を、なぜ捨てる者がいるのか? たとえ食肉処理場に売って金を儲けるだけのためにでも、世話をした方が得ではないのか? 必ずしも、そうではない。バウストン夫妻によると、家畜置場ではいつも、病気になったり怪我をしたり立てなくなったりする動物が出る。中には衰弱のあまり息も絶え絶えということもあり、こんな時にはほとんど手の施しようがない。

 ところが他の動物たち─ヒルダのように─は、適切な手当をしてやれば簡単に回復できる。しかしせりの日は効率最優先だ。畜産農家は数十頭から時には数百頭の動物を連れてせりに来る。数頭の弱った動物の必要に心配りするのは、彼らにとって時間の無駄なのである。自立できる動物を売らないと収入にならないのだ。病気や怪我をする動物は予想される範囲の損失であり、生産者は熱ばてや渇きで倒れているだけの彼らをしばしば投げ捨ててしまう。

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2009年4月13日 (月)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(36)

 ファーム・サンクチュアリのアイデアが生まれたのは、一九八六年だった。ロリーとジーンはすでに、食用家畜の飼育環境改善が大きなライフワークになると悟っていた。彼らはかつてデラウェア州に住んでいたころから食肉処理場やそれに隣接する家畜置場に定期的に出かけ、傷ついた動物たちを助けたり、非人間的な環境や行為を記録していた。ある晩秋の日、彼らはペンシルヴァニア州ランカスターの大規模な家畜置場に出かけた。週ごとの家畜のせりが前日に行なわれたため、ゴミが会場に散らばっていた。

 家畜置場には、必ず「デッド・パイル」がある。せりが終わるまでに死んだ動物の亡骸が捨てられる場所である。軽量コンクリートブロックの囲いの中には、羊、豚、牛の亡骸が投げ込まれていた。不意に、捨てられていた羊の一頭が頭をもたげ、束の間、目を開いたかと思うとまた閉じた。羊はあえぐように息をすると、頭を倒した。

 ジーンとロリーはショックにわが眼を疑った。急いでその羊に駆け寄ると、羊は横倒しになったまま浅い息をしていた。二人は慎重に羊を死骸の群れから引き出し、囲いから運び出した。

 ジーンはバンを家畜置場の門まで移動させて羊を乗せて十五キロメートルほど離れた動物病院に連れていった。動物病院に着いたころには、羊は虫の息だった。

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2009年4月10日 (金)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(35)

相哀れむという心情

 その日、働くロリーと再度合流してから、私は動物たちのもう一つの面を見た。私には訪問者に対する子供のように警戒心を持って接していたが、ロリーにはあたかも親友のように、心を許し、友好的に振る舞うのだった。よくなつく姿は通い合う愛情をしっかりと感じさせた。牛は彼女を舐めたり鼻をすりよせたりし、雄鶏は彼女の前を誇らしげに羽を膨らませて歩いた。

 ロリーは言う。「一九五〇年代まで、大半の農場は、ここのようだったのです。ここはいかなる点からも実際に農場であり、大規模農業が支配する前の伝統的な家族農場に似ています。唯一の違いは、私たちは人間のために動物たちを殺したり、搾乳したり、採卵したりしないことです。ここに住み込みで働いている者はみな完全菜食主義者・ヴィーガンですから、動物を肉や牛乳、そして卵のために育てる必要がありません」

 動物のうち、食卓に供されるものは一匹もいない。動物たちは、ここで自然に寿命を全うする。ファーム・サンクチュアリの雌牛は妊娠していないので、ほとんど乳を出さない。ファーム・サンクチュアリでは稀に子供を孕んだ雌牛を引き取ることがあるが、そんなときも人間のために搾乳することはない。生まれた牛は、授乳期が終わるまで母乳で育つ。動物たちには広々としたスペースが与えられる。ホルモン剤も投与せず、環境が健康的なため、商業農場では当たり前の薬の投与もずっと少ない。

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2009年4月 9日 (木)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(34)

 ファーム・サンクチュアリの動物はおとなしく、総じて人に慣れているが、犬や猫のような大げさな愛情表現やのどを鳴らして尾を振るような態度は、めったに見せない。私の飼い犬だったヘザーは、まるで妹のようだったのを思い出す。ボートを川まで引きずっていくと後をついてきて、中に飛び乗って冒険のお供をしたものだった。私がファーム・サンクチュアリで過ごした朝には、さしたる感動物語も逸話もなかった。しかし私は内心で、何かずっと深いものを感じていた。鶏や豚や牛で一杯の畜舎に入っていくと、非常に深いところで彼ら動物たちの存在と意識を感じ取ることができた。

 動物たちのいずれも、わざわざ私を喜ばせようとはしなかったし、私も動物たちに深い感情を抱くことはなかった。それだけに、なぜそんなに心を動かされたのか、説明するのは難しい。しかし動物たちに囲まれて立ちつくしていると、少なくとも何頭かは私の賢い愛犬と同じほど自らと周囲のことがわかっているのだ、と実感できた。私はそれほど動物に接する方ではないし、ファーム・サンクチュアリの動物たちに特別に感傷的になることもなかった。私が感じたのはむしろ尊敬であり、ある種の人間性である。豚たちの探るような目や、腹を触ってやった時のうれしそうな鳴き声を思うと、こうした動物たちも、私が自分の身体を気づかうように、自分の身体のことを意識しているのだと信じないわけにはいかなかった。刃物が私たちにとって鋭利であるなら、動物たちにとってもそうだと思わざるを得なかったのだ。

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2009年4月 8日 (水)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(33)

 赤外線ランプが畜舎の内部を取り囲み、くるぶしの深さまで干し草が敷き詰められている。たいていの豚はランプの下で眠る。多くはいびきをかいている。二、三頭が私に興味を引かれたようだった。幸いにも、彼らは一頭ずつ近づいてきた。三六〇キログラムもの豚が一度に三頭も寄ってきたら、私も穏やかではいられなかったことだろう。

 ロリーの夫ジーン・バウストンは、豚についての格言を教えてくれた。「犬は人を見上げる、猫は人を見下げる、しかし豚はまっすぐ人を見つめる」というのだ。こうして豚に囲まれていると、まったくそのとおりだと思う。実家の飼い猫が時折父に向けていた尊大なまなざしと、飼い犬が忠臣のようだったことを思い出した。しかしここにいる豚たちには、まったくそんな気配はなく、まっすぐ見つめてくる。そしてそれを見ていると、豚たちは数学や英語こそできないものの、周囲のことがちゃんとわかっているのだな、と実感する。私はまた、その穏やかさにも驚いた。目を引かれた三匹の豚を愛撫した後、畜舎を歩きまわって、寝ころんでいる豚たちの暖かい腹部を触ってみた。いびきをちょっと途絶えさせる豚もあった。目を開いて私を見上げる豚もいた。豚たちは吐息を洩らして、私が耳を掻いてやると少し伸びをした。

 少し丘を登ると、子牛用の畜舎がある。ここにいる子牛たちのほとんどは、食用子牛飼育場から引き取ってきたものだ。ドアの飾り板に「子牛保護舎に情熱を傾けたトム・ショルツに感謝します」とある。中に入った。さっきは豚に較べて自分の体格が見劣りすると思ったが、ここではまったく小人になった思いがした。救出されたときは子牛だった一ダースほどの牛は、二、三頭を例外に、いまやすべて成牛になっていた。ここでは、私への反応も個体差が激しかった。二、三頭は近づいてきて、顔を撫でさせてくれた。他は私が畜舎にいる間じっと立ったまま、愛撫してもほとんど反応を示さなかった。まったく関わり合いを持とうとしない雄牛も一頭いた。私は三度近づこうとしたが、その度に神経質そうに逃げてしまう。体重で七倍もある獣が、三歩以内に近づかれるのさえ恐れるというのは、実に奇妙なことだった(後にわかったことだが、この雄牛オールビーは、動物をひどく顧みないある子牛農場で飼われており、そこでは大半の子牛が餓死していた)。牛を撫でながら、私はその巨大さに畏怖の念を抱いていた。彼らの肩はボディ・ビルダーよろしく、どっしりと固く引き締まっていた。

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2009年4月 7日 (火)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(32)

マーカスさんの印象

 「私が畜舎を歩きまわっていた時、体重五五キログラムに満たないロリー・バウストンは、一頭の若い雄羊に近づいていった。彼女はためらいなく端綱を羊の首にかけると、柵囲いにくくりつけた。優しく熟達した手つきのため、体重が自分の何倍もある羊も速やかにくくりつけられる。次の瞬間、彼女は鮮やかな手つきで羊に寄生虫防止の注射を打ってやった。そして羊の縄を解くと頭をなでて褒めてやり、次の動物に近づいていった。

 ロリーはファーム・サンクチュアリの共同設立者である。ここはニューヨーク州北部にある、七〇ヘクタールの救助動物の天国だ。ファーム・サンクチュアリが広がるのは、ワトキンズ・グレンという小さな町の外れの美しい田園地帯。十二ほどの畜舎はたおやかに続く丘陵地に点在し、さまざまな動物──食肉用子牛、鶏、乳牛、ヤギ、豚、七面鳥、ウサギまで──を保護している。
 ロリーは作業を終えると、門を開けたら必ず閉じるようにと注意をして、私に一人で畜舎を見てまわる特別許可をくれた。

 私は鶏舎から見学を始めた。扉を開けて中に入ると、五〇羽ほどの鶏が近寄ってきた。挽材の切れ端に腰掛けていると、鶏たちの旺盛な好奇心の的になっているような気がした。鶏たちは臆病で、ほとんどは触られるのも嫌がっていたが、しかし私のそばにいたいようだった。

 五分かそこらすると、群れは私に慣れ、四散しはじめた。しかし何羽かはより物見高いらしく、そばにとどまった。ある鶏が私の目を引いた。他の鶏よりも体が小さく、映画館に忍び込もうとする男の子のように忍び足で近寄ってくる。何分かすると隣にやってきて、羽をなでさせてくれた。

 隣の畜舎は、十五メートルほど離れたところにあった。近づいていくと、豚の鳴き声が漏れてくる。畜舎の大きさは鶏舎の倍ほどで、四〇頭の豚を収容している。私は豚というものは中くらいの大きさの動物で、せいぜい七〇〜九〇キログラムくらいの体格だと思っていた。畜舎にいた豚たちは巨大だった。いちばん大きな豚は三六二キログラムもあった。豚の成獣の大きさは本来こういうものだと、私は後に教えられた。米国では大半の豚は、一〇〇キログラムほどに達すると解体される。

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2009年4月 6日 (月)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(31)

さて、「救われた動物たち」の章の紹介

 この章の扉にはトルストイの「公正な暮らしを求める人が第一に慎むべきは、動物を傷つけることである。」とあります。

 この章の前書きは「家族農園の衰退に伴って、かつてていねいに扱われ、温かく見守られていた動物たちは、いまや途方もない環境に置かれている。しかしニューヨーク州北部、次いでカリフォルニアに開かれたある農場では、家畜たちが集中飼育や監禁農法、さらには食肉処理場への無理な輸送のトラウマから解放されて余生を送っている。」となっています。

大学で畜産を学び、モンタナ州で継いだ4代目の牛肉肥育牧場主となって、その近代化を推し進めた経歴の持ち主エリック・マーカス氏が、それを放擲して完全菜食主義を推し進める立場になったあと見学に行ったニューヨーク州北部のファーム・サンクチュアリ、「救助動物の天国」を見ての驚きの印象紹介記がこの章の骨子です。

 食用動物飼育や取引の実態の一つの側面が生々しく書かれており、何も知らないで美味しく食肉を食べているが心ある善良な人々にショックを与えてくれる。
 ちなみに私、仙石はマーカスさんのこの印象記で高校時代の英語の教科書に出てきた「アニマルファーム」を思い出しました。

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2009年4月 3日 (金)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(30)

家畜とはいえない商業畜産

 自らの健康破綻をきっかけとして、「もう肉も卵も牛乳もいらない」ということに気がついて完全菜食主義者となったアメリカ人エリック・マーカス氏の目に映った家畜制度の初歩的な観察記録、今、安定生存問題で行き詰まりに陥っているヒトに一番必要な肉食批判精神の芽生えを期待させる章がこの「救われた動物たち」の章です。

 食糧ビジネスとして鶏・羊・豚・牛などを繁殖・肥育・加工・流通させようとすると、どうしても経済的観点によるドライな意志決定が優先されるようになります。

 動物が可哀想とか、ともにこの地球上で生きていく仲間なんだなどという感傷・共生意識は、このビジネスの意志決定には邪魔になってきます。

 これは、経済効率を最優先させて環境を壊し続ける人間の業としか言いようのない困った根深い性質と軌を一にする姿なのですが、肉屋に並ぶ食品を見ても、食卓に並んだ高級なフランス料理を見ても、動物を飼い殺しにして食らうおぞましい姿が捨象されるように栄養学の学習やコマーシャルなどで魔法にかけられている現代人は「まいうー」とよだれ状態になり、批判精神旺盛な人でも、なかなかこの食原点の問題こそ人間の人間に対する理不尽な支配・被支配、つまり階級対立の問題、他民族に対する支配抑圧と抵抗の問題、それが様々な軍事力を伴って行われる場合には戦争やテロリズムの政治・国際政治問題でもありますが、それらと共通の根を持っており、これらをやがて氷解・解決させる鍵になるヒトの意識問題の根元にある問題なのだということに対する認識が何故か欠落しているのです。

 「自然食ニュース」の読者の皆様には、是非この早川書房から出版されているエリック・マーカス氏の『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を本屋で購入し、座右の書の一冊としていただきたいという強い気持ちから、この本の内容紹介をダイジェストで連載しております。

 さらに深く追求してみたいと思われた方は、自然食ニュースに長期連載をしてくださっている太田龍先生の「家畜制度批判序説」を読まれることをお勧めします。

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2009年4月 2日 (木)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(29)

長年の間違った教育

 キャンベル教授は、こうした見解をなかなか出版できなかった。そんなにも大きな抵抗に遭う理由の一端は、栄養学者の多くが、肉と乳製品が重要な食品と考えられていた時代に教育を受けたためです。多くの重要なポストは、過去数十年間にわたって信じ続けられてきたことを疑おうとしない人々によって占められているのです。また栄養学の権威の多くがさまざまな家畜生産、酪農業界などの団体から補助金その他の資金援助を得ていることも、微妙な現実です。

 それでもこのようなキャンベル教授の栄養とがんとの関係についての発見は、1980年から95年の間になされたものです。現在、ようやく、こうした発見に基づいて米国でも政府レベルの勧告がされ始めました。

最もがんリスクが小さい ヴィーガン食

キャンベル教授はいう。

 「今やヴィーガン食はがんのリスクを減らす上で最も効果的な方法であると結論する強い根拠があります。もし完全なヴィーガンになるのがためらわれるのなら、少なくとも食事の大半をヴィーガン食にすることが理にかなっています。こうすれば、食物の大半は、がんのリスクを減らしこそすれ増やすことはないのですから」と。

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2009年4月 1日 (水)

『もう肉も卵も牛乳もいらない!』を読む(28)

肉食過多でもガンにならない人がいるのは?

 マーカスさんはさらに聞いた。「それではなぜ長年肉類を食べていて、がんにならない人がいるのですか?」

 キャンベル教授いわく「同じ質問は喫煙についても成り立ちます。50年間さんざんたばこを吸いながら、がんにならない人もいます。リスク閾値の問題です。

 リスク閾値とは何らかの物質を実際に病気になるまでどれくらいとることができるかを表します。リスク閾値が低い人にとっては、わずかな量の動物性食品でもリスクは劇的に高まるはずです。

 一方、動物性食品の害に対して、大きな抵抗力を持つ人もいます。問題はもちろん、自分のリスク閾値をあらかじめ知るのが難しいことです。家系の病気歴を振り返ることによってある程度は分かりますが、それでも閾値は個人ごとに大きく違います」


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